平安京左京六条四坊三町万寿禅寺跡 
   京都市下京区五条通間ノ町東入ル                 京都市埋蔵文化財研究所   19年2月3日


 万寿禅寺は1096(嘉保3)年8月7日、白河上皇の皇女で21歳で亡くなった郁芳門院内親王の冥福を祈って、六条内裏の中に1097年に建立された六条御堂を起こりとする。
その後、鎌倉時代の正嘉年間(1257〜9)、十地覚空とその弟子宝覚禅師によって、後の浄土宗や浄土真宗につながる浄土教の寺になった。
両僧が東福寺の円爾弁円(えんにべんえん、聖一国師)の道風を聞き、その教えを受けて浄土教を捨てて禅宗寺院となり、名も万寿禅寺と改め、1261(弘長元)年、開堂の儀をおこなった。

境内には多くの糸桜があったことだけは知られるが、庭園については詳細は不明であった。

「京城山万寿禅寺記」によると、万寿禅寺は永享6(1434)年2月14日の大火で焼けて再建されたとされているが、1591(天正19)年、豊臣秀吉の京都改造で東福寺塔頭に格下げとなった。




 左の写真は当日説明会に使われた洛中洛外図(上杉本)ですが、鴨川の東に東福寺、清水寺、三十三間堂、建仁寺、祇園社が配置されている。五条橋は大黒堂のある中島で二つに分かれている。

手前の洛中で目立つのは寺院で萬寿寺、七条道場、因幡薬師堂、大政所、悲田寺、御影堂、本国寺、東寺等が描かれている。

この中で、万寿禅寺は赤丸内に描かれている寺で、この寺の拡大図は下の写真の通り。



 「上杉本洛中洛外図屏風」は、天正2年(1574年)に織田信長から上杉謙信へ贈られたと伝えられ、以後米沢藩上杉家に伝来したという由来を持つ。
 筆者は桃山時代を代表する画家狩野永徳(かのうえいとく)。
京都を一望し、洛中と洛外の四季と、そこに暮らす人々の生活風俗を描き込んだものです。
上杉本と呼ばれるこの上杉家伝来の屏風は、数ある洛中洛外図の中でも初期に属するもので、豪華に、そして細やかに描かれている。
およそ2500人もの人物が、老若男女、身分、職業を問わず描かれており、さらに動物、植物、名所、祭など多くの要素を合せ持っている。
 調査地は平安京左京六条四坊三町にあたり、平安時代後期には白河天皇の御所
(六条内裏)が営まれました。六条内裏は東西1町、南北2町の敷地を占め、東側に高倉小路、西側に東洞院大路北側に六条坊門小路、南側に六条大路が通っていました。

その後、1099年、1123年、1159年に焼失しましたがその都度再建されました。
1358(延文3)年万寿禅寺京都五山の五位に列せられますが、前述の通り、1434(永亨6)年2月にあった市中の大火で類焼します。
しかし、1437(永亨9)年には大殿、山門、方丈などが再建されました。
 今回の調査では、江戸時代の町家跡の下層から、万寿禅寺に関係する園池跡が発見された。

園池跡には、以下の変遷があることが分りました。
1期:平安時代と推定できる池ですが、未調査のため不明。(上写真赤線)

2期:正確な規模や形態は明らかではないが、今回の調査では
    東西方向17mにわたって検出されました。
    池の勾配は大変ゆるやかです。池の北側から東岸にかけて
    焼けた瓦が多量に出土しました。
    また、池底からは15世紀中頃の土器も出土しました。(上写真青線)
   
3期:2期の池を埋め立て規模を縮小した池です。
    西岸の位置は2期とほとんど変わっていない。(上写真緑線)

4期:今回の調査で検出した最も新しい時期の池で、3期より更に
    規模を縮小している。
    規模は東西約7m、南北約13m、深さ約50cmでした。
    池内には、腐植土が厚く堆積しています。なお、池の北岸には、
    チャートが景石として据え付けられています。

(景石とは、比較的大きな石を1個あるいは大小2個位を庭のポイントに据えるもので、ただ単に庭石とか捨石(すていし)とも呼ばれます。)

1期

2期

3期

4期
 今回の調査では、3期以上にわたる園池の変遷が明らかになりました。
2期とした園池から出土した焼け瓦は、1434(永亨6)年2月の大火で焼失した瓦と考えて間違いがないでしょう。
4期については、万寿禅寺が東福寺の北へ移転する頃と京都市埋蔵文化財研究所では考えています。


池を埋め立てるのに使用されたのでしょう。
幾重にも積み重なって出土しました。





 出土物としては特に珍しいものはなく、焼失を裏付ける焼け焦げた瓦が主流でした。

景石


4期の池底には腐植土が厚く堆積しています。

平瓦

平瓦

丸瓦

がんぶり瓦

火事で変形した瓦

鬼瓦

タイ産の壷

中国産の青磁、緑彩壷
天目椀、土師器

瓦器(風炉)






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